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映画『誰も知らない』あらすじネタバレ感想・考察【今日も世界のどこかで起こっている悲しい現実に目を背けてはならない】


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こんにちは!管理人のfukubroです。

今回は映画『誰も知らない』(英題:Nobody Knowsのあらすじや見どころ、感想などを書いていきます。

 

社会派映画といえばやはり是枝監督ですよね。 本作は、無名だった是枝監督の長編映画4作目にしてその名を世界に轟かせたと言われる隠れた名作です。忘れてはいけないのが、この映画でデビューを果たした柳楽優弥の存在。彼は当時14歳にしてカンヌ史上最年少で男優賞を獲得し、謎の美少年として一躍有名になりました!

 

途中までネタバレはございませんので、まだ映画をご覧になっていない方もぜひ鑑賞前にチェックしてみてください。

 

 

映画『誰も知らない』作品情報

 主な作品情報はこちらです。

 

監督

          是枝裕和

脚本       是枝裕和
キャスト            柳楽優弥(明)
             北浦愛(京子)
              木村飛影(茂)
                清水萌々子(ゆき)
              韓英恵(紗希)
                YOU(けい子)
音楽     ゴンチチ
主題歌・挿入歌       タテタカコ

映画『誰も知らない』あらすじ・内容

 


出典:YouTube Movie

 

都内のとある2DKのアパートに母親のけい子(YOU)とその12歳の息子明(柳楽優弥)が引っ越してきます。どこにでもいるごく普通の親子かと思いきや、彼らには人に言えない秘密がありました。

 

家に着くとけい子はすぐに持ってきた衣装ケースを開け始めます。すると中から幼い男女の子供(茂とゆき)が飛び出してきます。そして、玄関からは小学生中学年くらいの女の子(京子)が現れます

 

けい子はアパートの大家に息子と二人暮らしであると告げていましたが、こっそりと3人の妹弟も連れてきていたのです。こうしてけい子と子どもたちの奇妙な5人の生活が始まります。

 

4人兄弟はみなけい子の連れ子で、それぞれに違う父親が存在します。4人は出生届を出されていないため、保育園にも学校にも通うことができないでいました。明以外の兄弟にいたってはまともに外出することも許されていません。

 

そんな狭い世界に生きる彼らにとって唯一の頼れる存在は母親のけい子でした。百貨店に勤めるけい子でしたが真面目に仕事もせず男と遊んでばかりいました。けい子が家を留守にしている間は、長男の明が幼い妹弟の面倒を見ることになっていました。

 

新しい恋人ができたことで家を空けることが多くなったけい子でしたがとうとう、子供たちを置いて蒸発してしまいます。いつ戻るかも分からない母親の帰りを待ちながら子供たちはけい子の残したわずかなお金で生活をすることになり…。

 

映画『誰も知らない』の見どころ・ポイント

 

・1988年に実際に起こった事件を題材にしている

 

・是枝監督が丹念な取材を続け、事件から15年の歳月を経て完成させた渾身の一作

 

・ネグレクトは現実世界で案外日常的に起こっているということ

 

【ネタバレ】映画『誰も知らない』感想・考察

 

ここからは、ネタバレを含む内容が含まれるため、映画をまだご覧になっていない方、そしてネタバレを知りたくないという方はご注意ください。

 

 

映画の元ネタとなった「巣鴨子供置き去り事件」の内容は?

 

本作は、1988年に東京都豊島区で発覚した保護責任者遺棄事件をモチーフに作成されたものです。

 

実際の子供の人数は5人、また子どもの父親は3人であったことが明らかとなっています。母親はいずれも事実婚として同棲していた男性に逃げられ、一人で自宅に籠って極秘出産を繰り返していたそうです。

 

5人とも出生届は出されておらず、発見されたときには兄弟のうち次男と三女の2人が既に死亡していたことが伝えられています。

 

大家の通報によって警察が駆け付けたことで事件が発覚し、極度の栄養失調状態だった姉妹はすぐに養護施設へ引き取られます長男は不良友達とともに三女の殺害に関与していたため、更生施設へ送られてしまいます

 

そして、母親は事件が発覚してから警察に自首し、裁判では保護責任者遺棄致死の罪で懲役3年執行猶予4年の有罪判決が下されます。姉妹はその後母親によって引き取られたそうですが、その後の家族の消息は分かっていません。

 

映画と実際の事件を比べてみると、相違点がいくつか出てきます。まず、子どもの人数が実際は一人多かったということ。母親は長男含む5人の子ども全員を自宅で出産するという強者でした。

 

最初は長男の父親に当たる人物と婚約をかわしていましたが、両親の反対によってかけおち同然で同棲を開始し、そこで長男が誕生したそうです。しかし、父親が長男の出生届を提出せず蒸発してしまい、母親一人で子どもを育てなくてはならず、生活に困窮し水商売に手を出してしまいます。

 

2つ目に三女の死因の相違が挙げられます。映画では三女の死因は事故死でしたが、実際の事件では長男とその不良友達2人が幼かった2歳の三女に執拗に暴行を加えて死に至らせたことが発覚しています。

 

映画で三女の死因が事故死に変えられたのは長男をネグレクトの被害者と考慮したことが考えられます。是枝監督は事件のすべてをありのままに作品に反映させない代わり、画面をとおしてネグレクトや児童虐待の恐怖をリアルなものとして私たちに伝えました。

 

子どもたちを救った少女

 

母親けい子が家を出て行ってから数か月過ぎたころ、明は母親との約束を破って妹弟たちを連れて外に出ていきます。久しぶりの外出にはしゃぐ妹弟たち。

 

そこでいじめられている少女紗希を見つけます。接点をもつうちに明と妹弟は紗希と仲良くなり明たちにとって初めての友達ができます。

 

何度か明たちの家に遊びに行くようになり紗希は明たちがおかれている状況を把握し始めます。ライフラインが止められ、数か月間家賃が滞納しているという明たちは明日にも家を追い出されかねない状況に追い込まれていました。

 

そんな明たちの身を案じた紗希は親切心から援助交際で稼いだお金を渡そうとしますが、紗希に好意を寄せていた明はその事実にショックを受け、以来紗希と距離を置いてしまいます。

 

その後、道端で出会った不良少年らとつるむようになった明の生活は徐々に荒れていき、ついには妹たちを放置して不良仲間の言いなりとなって万引きを犯すようになります。

 

それからしばらくして不良仲間から見放され再び一人となった明は不慮の事故で亡くなった妹を精一杯おくり届けるために紗希に頼んでお金を借ります。三女の遺体はアパートへ来た時と同じ衣装ケースに入れられ、好物のお菓子とともに埋められます

 

ラストで明たち妹弟と一緒に歩いて帰る紗希たちの姿はまるで本当の兄弟であるかのようです。問題は何一つ解決していないのに、気づけば彼らの雰囲気や表情からどこか清々しさを感じてしまいました。

 

結論から言えば、この映画で一番の救いは明たちが紗希と出会ったことです。もちろん賞味期限切れの廃棄弁当を配ってくれたコンビニ店員も彼らが生き延びるのに必要不可欠な存在です。

 

ただ、最大の疑問は”なぜ周りの大人は彼らの存在に気づいてあげられなかったか?”という点です。

 

紗希は明たちのために必死でお金を工面してくれようと体を張って助けようとしますが、彼女自身もいわゆる社会的な弱者であることを忘れてはなりません。

 

なぜなら、虐められている中学生だからです。彼女も本来は助けを必要とする立場なわけです。アルバイトもできない年齢の彼女が彼らの異変に気付いて助けようと奮闘しても根本的な解決は望めないでしょう。ここに現代社会の大きな闇が隠されているような気がします。

 

私自身、親から虐待を受けて育ちました。身体的な暴力は保育園~高校まで続きましたが、近所の人は助けてはくれませんでした。意外に思われた方もいるかと思います。

 

そんなに長い間虐待を受けていたら一度くらいは通報とかあっても不思議ではないですよね。しかし、本当に一度も誰からも虐待を疑われなかったのです。

 

近所の方や学校の先生含め、大人の人が気にかけてくれた覚えはありませんでした。もしかしたら、気づいていても、声がかけられなかったということもあるかもしれません。声をかければ面倒に巻き込まれるからとか自分にはどうすることもできないからとか思われていたかもしれません。

 

あるいは、周りも毎日のことだからと慣れてしまい、それが普通であると感じてしまっていたのかもしれないですね。あと、子どもも必死で隠そうとしますから余計分かりにくいのかもしれません。。。

 

話が長くなってきたのでまとめると、児童虐待やネグレクトは案外気づきにくいものであること、そして気づいたとしてもどうしてよいかわからないと思ってスルーされる場合があるかもしれないということです。このため、救えたかもしれない命が亡くなっているのも事実です。

 

近年は若いひとり親家庭にこのような問題が多いとされています。親が精神的に未成熟であること、経済的な困窮から精神を病んで子供に八つ当たりしてしまうといったことが考えられます。

 

是枝監督が映画で伝えたかったこととは?

 

是枝監督といえば、2018年に公開された映画万引き家族カンヌ国際映画祭パルムドール賞を受賞されたことが記憶に新しいですね。

 

是枝監督はこれまでに数々の「家族」をテーマとした映画を世に送り出しています。海街diaryそして父になるなど単なる家族というぼんやりとしたものではなく「普通とは違うカタチの家族」を描いてきました。

 

本作にかける想いも相当なものであったに違いません。映画として完成させるまでに10年以上もの歳月をかけて丹念に取材を重ね、構想を練り上げるという周到ぶりからして尋常ではないことが分かります。

 

映画をヒットさせたいとか映画愛とかの次元の話を超えていて、映画を通して観る者にメッセージを伝えたいという強い想いからきているように感じました。

 

それは「社会問題にもっと目を向けよう」といっている様にも感じますし、「多様性を受け入れよう」という風に捉えることもできます。

 

ラストで未解決のまま閉幕するところにもこだわりが窺えます。「今日もどこかで同じことが繰り返されているという現実を忘れてはいけない」と言われているような感覚でした。一個人の意見として、作品を観てそれぞれが自分なりに社会問題と向き合ってこの問題を理解しようとすることが一番求められているような気がしました。

 

おわりに

 

というわけで今回は映画『誰も知らない』のご紹介でした。

 

実際に起きた事件を題材とした映画って撮り方のうまいへたとか関係なしに胸にぐっと刺さるものがあるような気がします!

 

『誰も知らない』は技術もさることながら、役者さんの演技も目を見張るものがあります。自然な感じを演出するためにセリフをあえてつけずに役者さんの言葉で話をさせるシーンもあったりと、ドキュメンタリーをそのまま観ているような感覚でした。

 

子供たちの話す言葉や笑顔もとっても自然で飽きずに観ることができました。グロい表現とか描写はなかったはずなのに、目を覆いたくなるようなシーンもありました。やはり社会派映画で是枝監督の右に出る者はいないですね!

 

ちなみに、同じ社会派映画というジャンルで子宮に沈めるという映画があります。こちらも、育児放棄・ネグレクトをテーマとした作品となっています。フィクション映画ですが、2010年に起きた「大阪2児餓死事件」という実際の事件が元ネタとなっています。『誰も知らない』よりも100倍暗い内容です。

 

一度鑑賞しましたが、内容がショッキングすぎて二度と観れない映画だなと思うくらいでした。子役の演技がビビるくらいリアルで痛々しいです。それでも興味がある方は観てみてください。

 

最後までご覧いただきありがとうございます。次回もお楽しみに!!

 

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